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小海線の残念な一人旅

  22, 2022 08:43
小海線の一人旅

十数年前の年度末のこと。山梨県の石和温泉まで、職場の幹部会で一泊旅行に行った。行きは観光バス、帰りは現地解散で、直帰するヤツ、ゴルフに行くヤツなど、それぞれ。で、俺は以前からやってみたかった、列車での一人旅をすることにした。そのプランは、次のとおり。

山梨県の小淵沢駅から八ヶ岳の東側の山麓を抜けて、長野県の小諸駅まで行く「JR小海線」のローカル山岳鉄道に乗り、まだ寒い時期だから、雪原の景色を車窓から眺める。もしかしたら、俺みたいに一人旅をしてるおネエさんとの出会いにも期待して。
小諸の手前、佐久平駅で長野新幹線(現:北陸新幹線)に乗り換え、隣駅の軽井沢で下車、季節外れの旧軽銀座を思い出に浸りながら歩く。

こんな感じ。では、実際の状況を。

一人旅にかかる電車賃は、あらかじめSuicaにチャージしてあるので、石和温泉駅から自動改札を抜けて入場。各駅停車で小淵沢駅に向かう。

小淵沢に到着した。さすがにここまで来ると、寒い! なので、暖を取るためにホームの立食い蕎麦屋で月見そばを食った。小海線のホームに移動して、出発待ちの列車に乗り込む。

小海線は単線の非電化路線だから、列車は気動車(ディーゼルカー)。驚いたのは、ハイブリッド車もあるんだね。俺が乗ったのはフツーの気動車だったんだけど、回生ブレーキで発電した電力をバッテリーに充電してモーターでも走れる列車もあるんだって。

出発時刻になり、八ヶ岳を左に見ながら、列車は坂を登っていく。一人旅のおネエさんはいなかったんだけど、2人旅の同世代のおネエさんがいた。どんな話しをしてるのか聞き耳を立ててたら、なんと北千住の話しをしてるんだよ。足立区民か?

ルミネの中のあのお店の総菜がおいしいとか、そんな話しで盛り上がってる。同じ下町人間として近付きやすい状況だけど、なんか醒めちゃってね、声をかけるのはやめた。

列車は清里駅に到着。清里と言えば40年程ほど前、「an-an」や「non-no」に紹介されてブームになり、アンノン族のおネエさんが大勢訪れたリゾート地だ。無数のペンションやファンシーショップが立ち並び、まるで原宿の竹下通りのような駅前は、当時1坪が500万円と地価が高騰した。

でも現在ではすっかり廃れてしまい、老人ホームとして使われてるリゾートマンションが何棟か残る寂しい町になっちゃってね、駅前も1坪3万円くらいなんだって。

列車はさらに進み、JRで一番標高が高い野辺山駅に到着。雪原の中を走ることを想像してたんだけど、北海道でも本州の日本海側でもないから、地面にはうっすらと雪が乗ってるだけ。雪原感ゼロ!

列車はさらに進む。すると、山岳地の雰囲気はなくなって、ただの平野の風景になっちゃってね、遠くに浅間山は見えるけど、平凡な田舎の列車。

佐久平駅に着き、改札を出ようとしたら、なんと自動改札がない! 駅員に聞いたら、ここはSuicaの取扱地域外だから、Suica清算ができないんだって。すると駅員「事情聴取しますので、事務室に来てください!」だって。「事情聴取」って、犯罪者じゃねぇんだから、言葉を選べよ!

もちろんリーダーはあるからSuicaを読み取ることはできる。「どこから乗車されましたか?」って聞かれて、俺、間違えて「小淵沢」って言っちゃったんだよ。そうしたら「石和温泉じゃないですか!」って怒られた。まるで俺が運賃を誤魔化そうとしてるような空気になっちゃった。

結果、石和温泉から佐久平までの運賃を現金で支払わされ、証明書を渡された。「石和温泉駅の入鋏記録が残ってますので、この証明書をSuica取扱駅に提出し、リセットしてもらってください。」だって。

新幹線の発車まで時間があったので、駅前のイオンに寄ってみた。自宅近所のイオンと全く変わらず、ションベンだけして退店。駅に戻り、燐駅の軽井沢まで切符を購入。新幹線に乗車した。

もちろん自由席で、車内に入ったら1つだけ座席が空いてた。隣は綺麗なおネエさん。なので「空いてますか?」って声をかけたら「どうぞ♡」って言ってくれたので、すかさず着席。暖かい車内と綺麗なおネエさんの隣席で暫しの寛ぎタイム。でも、すぐに軽井沢駅に到着。

ここで、気が変わった。このまま帰っちゃおうと。季節外れの旧軽銀座を歩くプランは淡雪のように消え失せた。この電車、軽井沢を出ると、高崎、大宮の順で停まるだけ。急に大宮駅前のパチンコ屋に行きたくなり、軽井沢駅をスルー。そのまま大宮駅まで。

軽井沢までの切符しかなかったため、大宮駅で不足分を清算し、さらに佐久平駅での証明書でSuicaをリセットしてもらい、パチンコ屋へ。当然のように負け。タクシーで自宅まで帰りました。

時間と銭を賭けた一人旅、当初のプランとは全く違う、残念な一人旅になっちゃった。
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